
最近は、さまざまなアプリがブラウザ上で使えるようになり、メール、Officeツール、チャット、画像編集まで、インストールせずに使えるケースが増えています。とても便利な一方で、「動作が重い」「ファンが回り続ける」「少し使っただけでPCが遅くなる」といった現象に悩む人も少なくありません。そんなとき気になるのが、アプリをブラウザで使うのとWindowsにインストールして使うのでは、どちらがPCへの負担が軽いのかという点です。
結論としては、多くの場合、インストール版のほうが負担が少なく、動作も安定しやすい傾向があります。ただし、すべてのケースがそうとは限らず、ブラウザ版が適している場面もあります。この記事では、両者の違いと選び方について詳しく解説します。
パソコンの動作が遅くなる原因の多くは、アプリそのものより「ブラウザのタブの開きすぎ」や「メモリ不足」にあります。ブラウザ版が重くなりやすい理由と、インストール版が有利な理由を整理してみましょう。
ブラウザ版はなぜ負担が大きくなりやすいのか?
ブラウザ上で動くアプリは便利ですが、PCリソースの消費という面では負担が大きくなりがちです。その理由はブラウザそのものの構造にあります。ChromeやEdgeなどのブラウザは、安定性とセキュリティのために「タブごとに独立したプロセスを動かす」仕組みになっています。タブを10個開けば、内部で10個分の小さなアプリが同時に動作しているようなものです。
さらに各タブでは、JavaScriptや広告表示、動画再生、通知、拡張機能が並行して動いており、常にメモリやCPUを消費しています。そのため、ブラウザ版アプリは次のような状態を引き起こしやすくなります。
- タブの数が増えるほどメモリ(RAM)の消費量が急増する
- CPU使用率が上がりファンの回転が速くなる
- アプリの操作が遅くなる、固まりやすくなる
- 他のアプリにも影響し、Zoomなどの通話品質が下がる
ブラウザ版は「ユーザー操作 → ブラウザ → Webアプリ」という経路で処理が行われるため、インストール版に比べて余分なステップが増えることも負担の原因になります。PCが新しくても、ブラウザタブを大量に開いていると動作が不安定になるのはそのためです。
インストール版(ネイティブアプリ)が軽いことが多い理由
インストール版のアプリは、Windows向けに直接最適化されて作られています。そのため、処理経路が短く無駄がありません。動作の流れは非常にシンプルです。
ユーザー操作 → OS → アプリ
ブラウザを経由しないため、余計な負荷が発生しません。また、インストール版はGPU(グラフィックカード)やストレージなどのハードウェアリソースに直接アクセスできるため、より効率的に処理できます。特に動画編集や画像加工、オンライン会議、大量データの処理など負荷の高い作業には大きな差が出ます。
インストール版が有利なケースをまとめると次の通りです。
- 長時間使うアプリ
- 大量のファイルを扱うアプリ
- 高度な処理を行うアプリ
- 複数の作業を同時に行う環境
- 安定性が求められる用途
実際、Zoom・Teams・Slack・Adobeシリーズ(Photoshop・Premiereなど)・Office(Excel・PowerPoint・Outlook)は、ブラウザ版よりもインストール版を使うことでPCの負担が少なく安定性を確保できます。
ブラウザ版アプリのメリットは「軽さ」ではなく「手軽さ」
ブラウザ版アプリの最大のメリットは、負担の軽さではなく、手軽さと柔軟性です。次のような利点があります。
- インストール不要ですぐ使える
- どのPCでも同じ環境で作業できる
- アップデートが自動、管理が不要
- 制限のあるPC(社用・学校)でも使える
- 共有用途や短時間作業に向いている
たとえばGoogleドキュメント、Gmail、ChatGPT、Todoist、Canvaなどはブラウザ版のほうが便利な代表例です。特にリモートワークや複数デバイスで作業する環境ではメリットが大きくなります。
ブラウザ版のほうが軽いケースもある
例外的に、ブラウザ版が有利な場合もあります。次のようなケースです。
- アプリ自体が非常に軽量(テキスト中心のツールなど)
- インストール版が重く作られている(Photoshop Webなど簡易版サービス)
- ストレージ容量が少なくアプリを入れられない
- 一時的な利用で常用する予定がない
つまりブラウザ版は「軽い用途」「制限がある環境」「短期利用」に向いています。
どちらを選ぶべきか?判断基準
目的に応じて次のように選ぶのが合理的です。
インストール版が向いている状況
- 仕事で本格的に利用する
- 長時間作業する
- 他アプリと同時使用する
- 安定性とスピードが重要
- PCスペックに余裕がある
ブラウザ版が向いている状況
- たまにしか使わない
- 複数デバイスで同じ環境を使いたい
- 共有作業が前提
- ソフトをインストールできない
- まず試してみたい段階
ビジネスユーザーの多くは、主要アプリはインストール版で使い、補助的作業や共有作業はブラウザ版というように併用しています。
まとめ
多くの場合、インストール版のほうがPCへの負担は少なく、安定して快適に動作します。ブラウザ版は負担が軽いわけではなく、手軽さが最大のメリットです。作業内容や環境によって最適な選択は異なるため、目的に応じて使い分けるのが最も賢明です。
もし今、具体的にどのアプリを選ぶべきか悩んでいるなら、用途を教えていただければ最適な選択を提案します。快適な作業環境づくりの参考になれば幸いです。

