
商品の魅力を一生懸命伝えているのに、なかなか売れない。
そんな経験、ありませんか?
商品のメリットも説明しているし、お得になることも伝えている。
それなのに、なぜかお客様は動いてくれない。
ところが、商品の内容も価格も変えずに、伝え方を少し変えただけで、お客様の反応が大きく変わったという事例があるんです。
しかも、その伝え方には、人間が持っているある心理が関係しているんですね。
実は先日、私が勉強している『Hacking Human Mind』という本の中で、この心理を利用した広告の事例が紹介されていました。
それを聞いて、思わず「あっ! あのCMだ!」となったんです。
というのも、そのCM、私が昔アメリカに住んでいた頃に実際に見ていたものだったんですよね。
もう何十年も前なのに、今でも覚えているくらい印象的なCMでした。
当時は単純に「面白いCMだな〜」と思って見ていたんですが、今になって、その広告に隠されていた仕掛けを知ることになったんです。
いや〜、これは勉強になりました。
そして、今作っているLPにも使えるんじゃないかと思ったんですよね。
今回は、その広告の事例を紹介しながら、お客様の購買行動を左右する、ある心理の仕組みについてお話ししたいと思います。
アメリカで実際に見た、忘れられない牛乳のCM
そのCMというのが、アメリカで展開された「Got Milk?」という牛乳の広告キャンペーンです。
私がアメリカに住んでいた頃、テレビで何度も見かけた広告なんですが、その中でも特に印象に残っているCMがあります。
どんな内容だったのか?
ある男性が、自宅でくつろぎながらラジオを聴いています。
男性はピーナッツバター・サンドイッチを食べながら、のんびり過ごしているんですね。
すると、ラジオからクイズが流れてきます。
そのクイズに正解すると、高額な賞金がもらえるというものです。
そして、なんと!
その男性は答えを知っていたんです!
「これはチャンス!」
男性は慌てて電話をかけます。
そして、ラジオのパーソナリティにつながり、答えを伝えようとするんですが……。
ここで大変なことが起こります。
口の中がサンドイッチでいっぱいで、うまくしゃべれないんです!
本人は必死に答えを伝えようとするんですが、口がモゴモゴして、何を言っているのか聞き取れません。
焦った男性は、口の中のサンドイッチを流し込もうと牛乳を探します。
ところが……。
牛乳がない!
冷蔵庫にあった牛乳パックは、すでに空っぽだったんです。
そうこうしているうちに、ラジオのパーソナリティは答えが聞き取れないまま、電話を切ってしまいます。
答えを知っていたのに、賞金を逃してしまった男性。
その落胆した姿の後に、画面にたった一言のメッセージが表示されます。
「Got Milk?」
日本語にすると「牛乳ある?」という感じでしょうか。
いや〜、これが本当に面白いCMだったんですよね。
もう何十年も前のCMなのに、今でも覚えているくらいですから。
ちなみに、この「Got Milk?」キャンペーンは1993年に始まり、その後もさまざまなバージョンの広告が制作され、アメリカで広く知られるキャンペーンになりました。
私も当時、いろんなバージョンを見た記憶があります。
では、このCMの何がそんなにすごかったのでしょうか?
普通の牛乳の広告と、何が違ったのか?
ちょっと考えてみてください。
あなたが牛乳の販売促進キャンペーンを任されたら、どんな広告を作りますか?
例えば、
「牛乳にはカルシウムが豊富!」
「毎日の健康に牛乳を!」
「牛乳を飲んで元気になろう!」
こんな感じのメッセージを考えるんじゃないでしょうか?
私も、おそらくそう考えると思います。
牛乳を飲むことで得られるメリットを伝えるわけですね。
ところが、この「Got Milk?」のCMは違いました。
牛乳の栄養価も、健康へのメリットも、ほとんど説明していないんです。
それどころか、牛乳を飲んでいるシーンすらありません。
じゃあ、何を伝えていたのか?
それは、
「牛乳がなかったら、こんな困ったことになるかもしれませんよ」
ということなんです。
つまり、牛乳を飲むことで得られるメリットではなく、牛乳がないことで起こる問題を見せたわけです。
これ、よく考えると面白いですよね。
普通なら「牛乳を飲みましょう!」と伝えるところを、「牛乳がないと困るよね?」という伝え方に変えたんです。
実は、この伝え方の違いに、人間の購買行動を左右する心理が隠されているんです。
人間には「損失回避」という心理がある
その心理というのが、今回のテーマである「損失回避」です。
損失回避というのは、行動経済学で知られている人間の心理の一つです。
簡単に言うと、人は何かを得る喜びよりも、何かを失う苦痛を強く感じる傾向があるということです。
例えば、道端で1万円を拾ったとしましょう。
もちろん嬉しいですよね。
でも、翌日に財布から1万円を落としてしまったらどうでしょう?
おそらく、拾ったときの喜び以上にショックを受けるんじゃないでしょうか。
同じ1万円なのに、不思議ですよね。
人間は、何かを手に入れることよりも、今あるものを失うことに強く反応する傾向があるんです。
そして、この心理は商品を購入するときの意思決定にも大きく影響します。
先ほどの「Got Milk?」のCMも、まさにこの心理に働きかけていたと考えられます。
「牛乳を飲めば健康にいいですよ」
ではなく、
「牛乳がなかったら、大切なチャンスを逃してしまうかもしれませんよ」
というメッセージですね。
しかも、それを説教くさく説明するのではなく、ユーモアのあるストーリーで伝えているんです。
だからこそ、あれだけ印象に残る広告になったんでしょうね。
「17%節約できます」と「17%損します」では反応が違う?
もう一つ、本の中で紹介されていた興味深い事例があります。
それは、ガス代を節約できる設備の販売に関する話です。
ある省エネ設備を家庭に案内する際、営業担当者によって説明の仕方を変えたというものです。
一つ目のグループは、こんな説明をしました。
「この設備を導入すると、ガス代を17%節約できますよ」
そして、もう一つのグループは、こう説明したそうです。
「この設備を導入しないと、17%分のガス代を余計に払い続けることになりますよ」
さて、どちらの説明の方が購入につながったと思いますか?
実は、本で紹介されていた話では、後者の「損をする」という伝え方の方が、購入につながりやすかったそうなんです。
※この事例の具体的な実験条件や数値については、原典を確認できていないため、本で紹介されていた趣旨としてお伝えしています。
これ、なんとなく分かる気がしませんか?
「17%節約できますよ」と言われても、
「まあ、今のままでも特に困っていないし……」
と思うかもしれません。
ところが、
「このままだと、余計なお金を払い続けることになりますよ」
と言われると、
「えっ、それはもったいない!」
と思う人もいるわけです。
言っている内容は、ほぼ同じですよね。
でも、伝え方が違うだけで、受け取る側の印象が変わるんです。
これが損失回避の心理を利用したメッセージの特徴なんですね。
セールスライティングでも使われている考え方
実は、この損失回避の考え方は、私が以前勉強したセールスライティングの中にも登場していました。
商品やサービスのメリットを伝えるだけではなく、
「もし、この商品を使わなかったらどうなるのか?」
という未来をイメージさせる書き方です。
例えば、ホームページのセキュリティ対策を販売するとしましょう。
普通なら、
「セキュリティ対策を強化して、安全なサイト運営を実現しましょう!」
といったメッセージになるかもしれません。
もちろん、これも間違いではありません。
でも、損失回避の心理を意識すると、こんな伝え方もできます。
「もし明日、あなたのホームページが不正アクセスで停止してしまったら?」
「問い合わせが受けられなくなるだけでなく、お客様からの信用まで失ってしまうかもしれません」
どうでしょう?
後者の方が、セキュリティ対策の必要性を強く感じませんか?
実は私自身、最近、複数のWordPressサイトで不正アクセスへの対応を経験しました。
その中には、サイトが正常に表示されなくなったケースもあります。
こうした経験をすると、セキュリティ対策の重要性を改めて感じるんですよね。
ただ「安全になりますよ」と伝えるだけではなく、「対策しなかったら何が起こる可能性があるのか」を具体的に伝える。
これも損失回避の心理を利用したアプローチなんです。
ただし、実際に起こり得るリスクを伝えることが大前提です。
根拠のない危険をでっち上げて不安を煽るのは、マーケティングとしても信用を失う原因になってしまいますからね。
広告やLPで損失回避を活用するには?
では、この損失回避の心理を、実際の広告やLP(ランディングページ)でどう活用すればいいのでしょうか?
私が考える方法は、そんなに難しいものではありません。
まず、商品やサービスを購入することで得られるメリットを書き出します。
例えば、業務効率化ツールを販売するとしましょう。
そのツールを導入することで、毎月10時間の作業時間を削減できるとします。
普通なら、
「毎月10時間の作業時間を削減できます!」
というメッセージになりますよね。
もちろん、これでもメリットは伝わります。
でも、損失回避の視点で考えると、こんな伝え方もできるんです。
「今の作業を続ける限り、毎月10時間を費やし続けることになります」
さらに、
「毎月10時間、年間120時間。その時間を本来の営業活動に使えたとしたら?」
というメッセージも考えられます。
どうでしょう?
単に「10時間節約できます」と言われるよりも、「年間120時間を失っているかもしれない」と言われた方が、ちょっと気になりませんか?
もちろん、実際に10時間削減できるという根拠があることが前提です。
大切なのは、商品を購入することで得られるメリットだけではなく、購入しなかった場合に失い続けるものにも目を向けてもらうということです。
例えば、次のような言い換えも考えられます。
広告費の場合
通常のメリット訴求:
「広告費を削減できます」
損失回避を意識した訴求:
「余計な広告費を払い続けることになります」
ホームページの集客の場合
通常のメリット訴求:
「問い合わせが増えます」
損失回避を意識した訴求:
「今のホームページでは、見込み客を逃しています」
業務効率化の場合
通常のメリット訴求:
「作業時間を短縮できます」
損失回避を意識した訴求:
「その作業に、ムダに多くの時間を使っていませんか?」
どうでしょう?
どちらも、伝えようとしていることは基本的に同じです。
でも、「得られるメリット」を伝えるのか、「失っているもの」を伝えるのかで、受け取る側の印象が変わりますよね。
もちろん、こうしたメッセージを使う場合は、本当に無駄な広告費が発生しているのか、実際に見込み客を逃しているのかなど、根拠を確認する必要があります。
そのうえで使えば、いろんな商品やサービスに応用できる考え方だと思います。
ただし、恐怖を煽りすぎるのは逆効果
ここで一つ、注意したいことがあります。
それは、損失回避が効果的だからといって、必要以上に恐怖を煽らないことです。
「今すぐ買わないと大変なことになります!」
「このままでは、あなたの会社は危険です!」
「知らないと絶対に損します!」
こんなメッセージばかり並んでいたら、どうでしょう?
私だったら、ちょっと引いてしまいますね😅
実際、恐怖を強く感じすぎると、人は行動するどころか、情報そのものを避けたり、考えることをやめてしまったりする場合もあります。
だからこそ、私はさりげなく使うのがいいんじゃないかと思っています。
例えば、
「このままの方法を続けた場合、どれくらいの時間やコストがかかるのか、一度計算してみませんか?」
という問いかけでも、十分に損失を意識してもらえる可能性があります。
そして、損失を伝えた後には、その問題を解決できる方法も提示する。
ただ不安にさせるのではなく、
「こうすれば、その問題を解決できますよ」
という希望まで伝えることが大切だと思います。
そう考えると、先ほどの「Got Milk?」のCMは、本当によくできていますよね。
牛乳がないことで賞金を逃してしまうという、ちょっとした悲劇をユーモアたっぷりに見せています。
でも、決して深刻な恐怖を煽っているわけではありません。
そして最後に「Got Milk?」と問いかける。
たったこれだけで、「そういえば、うちに牛乳あったかな?」と思わせるわけです。
いや〜、うまいですよね。
今作っているLPにも取り入れてみようと思います
実は今、私自身も新しいLPを制作しているところなんです。
今回、損失回避について勉強しながら、ふと思ったんですよね。
「あれ? 今作っているLPには、このアプローチが入っていないな……」
商品やサービスを利用することで得られるメリットは、しっかり伝えているつもりです。
でも、利用しなかった場合に、どんな機会を失ってしまうのか?
そこについては、あまり触れていなかったんですよね。
これはちょっと見直してみる価値がありそうです。
もちろん、損失回避のメッセージを入れたからといって、必ず成約率が上がるとは限りません。
ターゲットや商品、伝え方によっても反応は変わるでしょう。
だから、実際にLPに取り入れたら、反応を比較してみたいと思っています。
こういうのって、勉強して知識として理解するだけでは、なかなか身につかないんですよね。
実際に使ってみて、結果を見て、改善していく。
やっぱり、これが大事なんだと思います。
あなたの商品は、何を「失わずに済む」商品ですか?
今回、改めて損失回避について学んで感じたのは、マーケティングでは「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」が本当に重要だということです。
「これを買えば得しますよ」
というメッセージも悪くありません。
でも、
「これを使わなかったら、何を失ってしまうのか?」
という視点を加えることで、これまでとは違った反応が得られるかもしれません。
そして、今回紹介した「Got Milk?」のCMのように、必ずしも直接的に損失を訴える必要はないんですよね。
ストーリーを通して、商品がなかった場合の困った状況を見せる。
それだけでも、十分に印象的な広告になるわけです。
いや〜、何十年も前にアメリカで見たCMが、今になってマーケティングの教材として登場するとは思いませんでした。
当時は単に面白いCMだなと思って見ていましたが、今こうして振り返ると、非常によく考えられた広告だったんですね。
あなたが今、商品やサービスを販売しているなら、一度考えてみてください。
「お客様があなたの商品を購入しなかった場合、何を失うことになるのでしょうか?」
そこに、これまで気づかなかった新しい広告メッセージのヒントが隠れているかもしれませんよ。

