
「こんなに人気があるなら、いつでも買える定番商品にすればいいのに」
期間限定の商品を見て、そう思ったことはないですか?
私も先日、娘とマクドナルドの月見バーガーを食べながら、まったく同じ話をしていました。
でも、マーケティングの視点で考えると、人気商品だからこそ定番化しないという戦略があります。
今回は、スターバックスの「パンプキン スパイス ラテ」やマクドナルドの「月見バーガー」を例に、期間限定商品が売れる理由と、その考え方を個人事業主や中小企業の商品・サービスに取り入れる方法について紹介します。
スタエフでも話しました!
https://misweb.net/vew3
いつでも買える商品は、後回しにされる
人は「いつでも買える」と思うと、急いで行動しません。
興味があったとしても、
- 今度でいいか
- また必要になったら考えよう
- もう少し比較してから決めよう
と、判断を先延ばしにしてしまいます。
ところが、「今月末まで」「先着10名」「この季節だけ」と条件が加わると、商品の見え方が変わります。
今決めなければ、手に入らなくなる可能性があるからです。
マーケティングでは、これを「希少性」と呼びます。
有効期限が短い無料券のほうが使われた
私が読んでいる『Hacking the Human Mind』では、希少性に関連する興味深い実験が紹介されています。
内容は、コーヒーとケーキを無料で楽しめるクーポンを配るというものです。
クーポンは2種類あり、それぞれ違う有効期限が設定されていました。
- 有効期限が3週間のクーポン
- 有効期限が2か月のクーポン
普通に考えると、2か月使えるクーポンのほうが便利ですよね。利用できる期間が長いので、使われる割合も高くなりそうです。
ところが、実際には有効期限が短いクーポンのほうが、よく利用されたそうです。
期限が長いと「まだ大丈夫」と後回しになります。しかし期限が短いと、「早めに使わなければ」と行動する理由が生まれます。
つまり、お客様にとって条件が良いことと、実際に行動してもらえることは、必ずしも同じではないということです。
満足感は、続きすぎると薄れてしまう
もう一つ、面白い実験が紹介されていました。
マッサージの満足度に関する実験です。
マッサージを受ける人を2つのグループに分けて、一方のグループはマッサージの間に短い中断を入れ、もう一方のグループは中断せず連続して施術を受けてもらったそうです。
どちらのグループの満足度が高かったと思いますか?
一見すると、気持ちの良いマッサージは中断せず、続けて受けたほうが満足度は高くなりそうですよね。
ところが、評価が高かったのは、途中に中断を入れたグループでした。
人は、良い刺激であっても、それがずっと続くと次第に慣れてしまいます。
最初は「気持ちいい」と感じていても、やがてそれが当たり前になってしまうのです。
反対に、一度中断されると、再開したときに良さをあらためて感じられます。
これは商品やサービスも同じです。
いつでも手に入る状態をつくることが、必ずしも商品の価値を高めるとは限りません。
あえて提供しない期間をつくることで、特別感や期待感を保てる場合があります。
スターバックスが人気商品を定番化しない理由
スターバックスの「パンプキン スパイス ラテ」は、秋の訪れを感じさせる季節商品として知られています。
もし人気があるなら、年間を通して販売したほうが売上は増えそうですよね。
しかし、いつでも飲めるようになると、
- 今すぐ飲まなくてもいい
- いつでも買える
- 特別な商品ではない
と思われる可能性があります。
季節限定だからこそ、「今年もこの季節が来た」「販売期間中に飲んでおきたい」という気持ちが生まれます。
商品そのもののおいしさだけでなく、「秋になったら飲むもの」という体験まで含めて価値になっているわけです。
月見バーガーも同じ仕組み
日本でわかりやすい例が、マクドナルドの月見バーガーです。
毎年楽しみにしている人が多く、発売が始まるとSNSでも話題になります。
月見バーガーも、年間を通して販売すれば、最初は売れるかもしれません。
しかし、いつでも買えるようになれば、季節のイベントとしての特別感は次第に薄れていくし、ある程度食べるとその味に慣れてしまい、売上も落ちていく可能性大です。
秋だけ販売するからこそ、商品が季節の記憶と結びつきます。
「月見バーガーの季節が来た」
「今食べないと、来年まで食べられなくなる」
この感覚が、毎年買いたくなる理由の一つになっているのだと思います。
「懐かしさ」も購買意欲を高める
パンプキン スパイス ラテには、希少性に加えて「ノスタルジー」、つまり懐かしさを呼び起こす要素もあると本には書かれていました。
カボチャやスパイスの香りは、欧米では秋の行事や家族で過ごした時間、季節の料理などを思い出させるものです。
人は、まったく知らないものを買うときには不安を感じます。
「本当に自分に合うのか」「買って失敗しないか」と考えるため、購入のハードルが上がります。
一方、過去の楽しい記憶や、よく知っている体験につながる商品には安心感があります。
新商品でありながら、どこか懐かしい。
この組み合わせが、商品をより魅力的に見せているんですね。
個人事業主や中小企業はどう活用するか
期間限定の戦略は、大手の飲食店だけが使えるものではありません。
個人事業主や中小企業でも、次のような形で応用できます。
1.募集期間を決める
講座やコンサルティングを常時募集するのではなく、「今月25日まで」と受付期間を設定します。
締切があることで、検討中のお客様が判断しやすくなります。
2.人数を限定する
「先着5社」「個別対応のため3名まで」のように、対応できる人数を明確にします。
ただし、実際には何人でも対応できるのに、見せかけで限定するのはおすすめしません。理由のある、正直な限定にすることが大切です。
3.季節限定の商品をつくる
季節や行事と商品を組み合わせる方法です。
たとえば、
- 年末の販売計画づくり相談
- 新年度向けのWeb集客診断
- 夏季限定のキャンペーンLP制作プラン
- 決算前の広告改善相談
といった企画が考えられます。
同じサービスでも、提供する時期と目的を明確にすると、今申し込む理由が生まれます。
4.いったん販売を終了する
ずっと販売し続けるのではなく、受付期間が終わったら本当に募集を停止します。
そして、改善したうえで次回の募集を行います。
販売しない期間があることで、お客様の期待感を高められます。また、提供する側もサービスの内容を見直しやすくなります。
限定すれば何でも売れるわけではない
ここは大事なところですが、「期間限定」と書けば何でも売れるわけではありません。
そもそも欲しくない商品に締切を設けても、お客様は動きません。
まず必要なのは、
- お客様が本当に必要としている商品であること
- 商品の価値がきちんと伝わっていること
- なぜ限定なのか、納得できる理由があること
です。
限定は、商品の魅力をゼロから生み出す魔法ではありません。すでにある価値を際立たせ、お客様が決断するきっかけをつくる方法です。
まとめ
人は、いつでも手に入るものを後回しにします。
そして、どれほど良い体験でも、それが続けば次第に慣れてしまいます。
だからこそ、スターバックスのパンプキン スパイス ラテやマクドナルドの月見バーガーは、人気があっても期間限定で販売されているのでしょう。
もし、あなたの商品やサービスが「興味は持たれるけれど、なかなか申し込んでもらえない」という状態なら、商品の内容だけでなく、売り方を見直してみてください。
募集期間、人数、季節、提供回数などに、本当の意味での限定性を加えられないでしょうか。
お客様に「今、行動する理由」をつくる。
それだけで、同じ商品でも反応が変わる可能性があります。

