
「お腹が空いたらスニッカーズ」
このキャッチコピーはあまりにも有名ですよね。
スニッカーズはアメリカのマース社(Mars, Incorporated)の製品で、同社は他にもM&M’s、ミルキーウェイ、TWIXなど、世界的に有名なお菓子ブランドを数多く展開している大企業です。
M&M’sの「お口でとけて、手にとけない」(Melts in your mouth, not in your hand)というキャッチコピーも有名ですよね。
今、『Hacking Human Mind』(リチャード・ショットン、マイケル・アーロン・フリッカー著、ダイレクト出版)という、世界のトップ企業が実施して成功したマーケティング施策を紹介している本を読んでいます。
その中で、スニッカーズの広告について詳しく解説されていて、とても面白かったので、それを元に、「お客さんに商品を思い出してもらえるキャッチコピーは、どうやって作ればいいのか?」を考えてみました。
これをヒントにあなたの商品やサービスのキャッチコピーを作ったら、あなたも大成功するかも!?
スニッカーズのキャッチコピーの解説
スニッカーズといえば、「お腹が空いたらスニッカーズ」という言葉を覚えている人も多いと思います。
また、スニッカーズの世界的に有名な広告キャンペーンには、「You’re not you when you’re hungry.」というメッセージがあります。
日本語にすると、「お腹が空いているとき、あなたはあなたじゃない」といった意味です。
お腹が空くと、イライラする。集中できない。力が出ない。普段とは違う自分になってしまう。
そこでスニッカーズを食べる。すると空腹が満たされ、いつもの自分に戻る。
この流れを整理すると、お腹が空く → イライラする・集中できない → 空腹を満たしたい → 食べるとなります。
ここで「空腹を満たしたい」という欲求が生まれていることに注目してください。
今の自分は「お腹が空いている」。理想は「お腹が満たされている」。この2つの状態の間にはギャップがあります。
人は、このギャップを埋めたくなります。そして、そのギャップを埋めるための具体的な方法として「食べる」という行動があり、その選択肢としてスニッカーズがあるわけです。
つまり、現在の状態 → 欲求 → 解決方法という流れができています。
意図と行動にはギャップがある
ところが、人間は「○○したい」と思ったからといって、必ず行動するわけではありません。
たとえば、「運動しなきゃ」「本を読もう」「ダイエットしよう」「営業しなきゃ」「ホームページを改善しよう」と思っていても、なかなか実行できないことがありますよね。
つまり、「やろう」という意図と、実際に「やる」という行動の間にはギャップがあるということです。
では、どうすればこのギャップを埋めることができるのでしょうか?
その方法の一つが、行動に「いつ」「どこで」「どんな状況で」を紐付けるというものです。
「いつ・どこで」を決めるだけで行動が変わる
『Hacking Human Mind』では、この考え方に関連する興味深い実験が紹介されています。
一つは、クリスマスイブの計画について短いレポートを書いてもらう実験です。参加者を2つのグループに分けました。
グループAは、単純に「レポートを書いてください」と依頼しました。
グループBは、レポートを書くことに加えて、「いつ、どこでレポートを書くのか」まで明確にしてもらいました。
その結果、レポートを実際に提出した割合は、グループA:32%、グループB:71%だったそうです。
「いつ、どこでやるのか」を具体的にしただけで、実際に行動する人が大幅に増えたわけです。
運動でも同じような結果に
もう一つ、運動についての実験も紹介されています。参加者に、2週間の間に行った運動を記録してもらいました。今度は3つのグループに分けます。
グループAには、特に追加の依頼はしません。
グループBには、運動することのメリットや効用を書いた小冊子を渡しました。
グループCには、小冊子を渡したうえで、「いつ、どこで運動するのか」を具体的に決めてもらいました。
週1回20分以上運動した人は、グループA:35%、グループB:38%、グループC:91%だったそうです。
ここが非常に面白いところです。「運動は体にいいですよ」と運動のメリットを教えただけでは、35% → 38%と、ほとんど変わっていません。
ところが、「いつ、どこで運動するのか」まで具体的にしたグループは、91%まで上昇しています。
つまり、人を行動させるためには、「なぜやった方がいいのか」を説明するだけでは不十分な場合があるということです。
それよりも、「いつ、どこで、どんな状況になったら行動するのか」を具体的にする。そうすることで、「やろう」という意図と実際の行動とのギャップを埋めやすくなるわけです。
これをスニッカーズに当てはめると?
ここで、「お腹が空いたらスニッカーズ」に戻ってみましょう。
このコピーの面白いところは、単に商品のメリットを伝えているのではないことです。
「お腹が空いたら」という特定の状況と、「スニッカーズ」という具体的な商品を結びつけています。つまり、お腹が空いたら → スニッカーズです。
「お腹が空いたら」という言葉には、時間・状況・気分が含まれています。
空腹になる。イライラする。集中できなくなる。この状態を何とかしたい。そこでスニッカーズ。
このように、「ある状況になったら、この商品」という結びつきを作っているわけです。
何度も広告を見ることで、「お腹が空いた」=「スニッカーズ」という組み合わせが頭の中にできていく。そして実際にお腹が空いたとき、「そういえばスニッカーズ……」と思い出してもらえれば、購入につながる可能性が高まります。
つまり、このキャッチコピーは、商品を覚えてもらうだけでなく、商品を思い出す「きっかけ」まで一緒に覚えてもらっていると考えることができます。
ここが、このコピーの非常にうまいところではないでしょうか。
このコピーの何がウケたのか?
一般的な広告では、「おいしい!」「高品質!」「○○成分配合!」「業界最高クラス!」など、商品の特徴やメリットを伝えようとします。
もちろん、それも重要です。しかし、それだけでは、「いつ、その商品を思い出せばいいのか?」までは伝えていません。
一方、「お腹が空いたらスニッカーズ」なら、「お腹が空いたとき」という、商品を思い出すタイミングまで指定しています。
商品名だけを記憶してもらうのではなく、商品を必要とする状況とセットで記憶してもらう。
私は、ここがこのタイプのキャッチコピーの重要なポイントだと思います。
このタイプのコピーの作り方
ここまで読んで、「なるほど。それなら『○○したら、うちの商品』と書けばいいんだ!」と思ったかもしれません。
でも、単純に言葉遊びとしてマネしてもダメです。
重要なのは「○○したら」という言葉ではありません。その前に、お客さんがどんな欲求を持っていて、その欲求がどんな瞬間に強くなるのかを考える必要があります。
このコピーの構成
構造を簡単にすると、1.何かが起こる → 2.現在と理想の状態にギャップが生まれる → 3.ギャップを埋めたいという欲求が生まれる → 4.商品・サービスで解決するとなります。
スニッカーズなら、お腹が空く → イライラする・集中できない → 空腹を満たしたい → スニッカーズを食べるです。
そして、広告では途中を大胆に削って、「お腹が空いたらスニッカーズ」にしているわけです。
では、自分の商品やサービスでは、どうやってこのタイプのキャッチコピーを作ればいいのでしょうか。私は、次の4つのステップで考えると作りやすいと思います。
1.ターゲット顧客の欲求をリストアップする
まず最初に、「お客さんは何を求めているのか?」を考えます。
「○○したい」だけでなく、「○○になりたい」「○○を避けたい」「○○を減らしたい」「○○から解放されたい」「○○を解決したい」なども含めて、できるだけたくさん書き出してみます。
もちろん、この欲求を知る一番いい方法は、実際のお客さんに聞くことです。
すでにお客さんがいるのであれば、「なぜ、この商品を買おうと思ったんですか?」「申し込む前は、どんなことで困っていましたか?」「何がきっかけで、そろそろ何とかしなきゃと思ったんですか?」などと聞いてみると、自分では思いつかなかった欲求が出てくることがあります。
ただ、最初から難しく考える必要はありません。まずは自分で思いつくものをどんどん書き出してみましょう。
たとえば、私が提供しているLP制作講座なら、「自分でLPを作れるようになりたい」「LP制作を外注する費用を抑えたい」「広告を出したいけど、受け皿になるLPがない」「商品を作ったのに、どうやって売ればいいのかわからない」「ホームページはあるけど、問い合わせにつながらない」などの欲求や悩みが考えられます。
2.その欲求が強くなる「瞬間」を探す
次に重要なのが、その欲求は、どんな瞬間に強くなるのか?ということです。
ここで、いつ? どこで? 何をしたとき? どんな出来事が起きたとき? どんな気分になったとき?と考えてみます。
先ほどのLP制作講座なら、「新しい商品を作ったとき」「広告を出そうと思ったとき」「LP制作の見積もりを取って、その金額を見たとき」「自分でLPを作ろうとして、途中で手が止まったとき」などが考えられます。
「自分でLPを作れるようになりたい」という欲求が常に同じ強さで存在しているわけではありません。ある出来事が起こった瞬間に、その欲求がグッと強くなる。その瞬間を探すわけです。
3.その瞬間と商品・サービスを結びつける
欲求が強くなる瞬間が見つかったら、商品やサービスと直接結びつけてみます。
たとえばLP制作講座なら、「LPを外注しようとして、見積もりの金額に驚いたら。LP制作講座。」あるいは、「広告を出したい。でもLPがない。そんなときは、LP制作講座。」といったコピーが考えられます。
もう一つ、思春期の子どもを持つ親を対象にした子育てカウンセリングを例にしてみましょう。
親御さんの欲求として、「子どもとちゃんと話せるようになりたい」「何を考えているのか知りたい」「親子関係を悪くしたくない」「どう接すればいいのかわからない」などが考えられます。
では、その欲求が強くなる瞬間はいつでしょうか? たとえば、子どもに話しかけても「別に」と言われて会話が終わったとき。あるいは、子どもが部屋に入ってドアを閉めたとき。そんな瞬間かもしれません。
そこから、「『別に』で会話が終わってしまったら。思春期子育てカウンセリング。」といったコピーを考えることができます。
大切なのは、サービスの特徴を説明することから始めるのではなく、お客さんがそのサービスを必要とする瞬間から考えることです。
4.余計な言葉を削る
最後に、余計な言葉を削ります。ここは意外と重要です。
たとえば、「LPを制作会社に依頼しようと思って見積もりを取ったものの、思った以上に制作費が高くて困っている方は、ぜひ当社のLP制作講座をご検討ください」では、説明文になってしまいます。
これを、「LPの見積もり、高いと思ったら。LP制作講座。」まで削ってみる。
思春期子育てカウンセリングなら、「思春期になった子どもとの会話が減ってしまい、どう接すればいいのかわからなくなっているお母さんのためのカウンセリングです」ではなく、「『別に』で会話が終わったら。思春期子育てカウンセリング。」まで削ってみる。
説明しすぎない。「きっかけ → 商品・サービス」の距離をできるだけ短くする。これがポイントです。
もちろん、これだけですべての商品が売れるわけではありません。広告やLPでは、このキャッチコピーのあとに、「なぜこの商品なのか」「どんなメリットがあるのか」「他の商品と何が違うのか」といった説明も必要です。
でも、最初にお客さんの注意を引き、「あ、これ自分のことだ」と思ってもらう言葉として、この考え方はかなり使えるのではないでしょうか。
まとめ
今回紹介したキャッチコピーの作り方をまとめると、1.ターゲット顧客の欲求をリストアップする → 2.その欲求が強くなる瞬間を探す → 3.その瞬間と商品・サービスを結びつける → 4.余計な言葉を削るとなります。
大切なのは、「うちの商品は何がすごいんだろう?」だけから考え始めないことです。
その前に、「お客さんは、どんな瞬間にこの商品が欲しくなるんだろう?」と考えてみる。
「いつ?」「どこで?」「何が起こったとき?」「どんな気分になったとき?」
そこまで考えていくと、商品を思い出してもらうための「きっかけ」が見えてきます。そして、そのきっかけと商品を結びつける。
「お腹が空いたらスニッカーズ」のように、いつかお客さんがその状況になった瞬間、あなたの商品が頭に浮かぶ。
そんなキャッチコピーが作れたら強いですよね。
さて、あなたの商品なら、「○○したら、あなたの商品」。この「○○」には何が入るでしょうか?
ぜひ一度、考えてみてください。

